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チームの「自分たちならできる」は成績と関係するか|集団効力感の研究を野球で読む

公開 約8分で読めます文:SEYWO

阪神のリーグ連覇を入り口に、チームが共有する自信(集団効力感)と成績の関係を調べたメタ分析を紹介。漠然とした「うちは強い」と、場面ごとの「これならできる」の違いを、野球の具体的なプレーに置き換えて解説します。

3行でわかる

  • チームの自信には、場面を問わない「うちは強い」と、特定のプレーについての「これならできる」の2種類がある
  • 多数の研究をまとめた分析では、どちらの自信もチームの成績と正の関係があると報告されている
  • 「うちは強い」という自信は、具体的な「これならできる」に変わったときに成績と結びつく、という解釈が支持された

チームの雰囲気が良いと、ピンチでも浮き足立たずにプレーできる。野球に関わる人なら、一度はそう感じたことがあるはずです。

では、チームが共有する「自分たちならできる」という自信は、本当にチームの成績と関係しているのでしょうか。関係しているとすれば、どのような自信が大切なのでしょうか。この記事では、この2つの問いに答えた心理学の研究を紹介し、野球の具体的なプレーに置き換えて考えます。

今日の話題:阪神が球団初のリーグ連覇

10月3日、阪神タイガースのセ・リーグ優勝が決まりました。NPBの発表によると、阪神はこの日の広島戦に敗れましたが、2位の巨人も敗れたため優勝が確定しました。2年連続8度目の優勝で、リーグ連覇は球団史上初めてです。

連覇の要因は、戦力・采配・故障者の少なさなど数多く考えられ、外から特定することはできません。この記事でも、阪神が強かった理由を説明するつもりはありません。勝ち続けるチームのニュースをきっかけに、「チームの自信と成績の関係」という一般的な問いを、研究にもとづいて考えます。

論文を読む:チームの自信は成績と関係するのか

今日の論文

Collective efficacy, group potency, and group performance: Meta-analyses of their relationships, and test of a mediation model

Stajkovic, A. D., Lee, D., & Nyberg, A. J. (2009). Journal of Applied Psychology, 94(3), 814–828.
https://doi.org/10.1037/a0015659

  • 問い チームの2種類の自信(集団効力感と集団の潜在力)は、それぞれチームの成績とどう関係するか。2種類の自信どうしは、どうつながっているか。
  • 方法 これまでに発表された多数の研究のデータを統合して分析する「メタ分析」。
  • 結果 どちらの自信も、チームの成績と正の関係(自信が高いチームほど成績もよい傾向)があると報告されています。さらに、集団の潜在力と成績の関係は、集団効力感を介して説明できるというモデルが支持されました。

要約は野球メンタルラボによるものです。正確な内容は原著論文をご確認ください。

2種類の「チームの自信」

この研究を理解するには、まず2つの用語を区別する必要があります。

用語 定義 野球での例
集団の潜在力 課題の種類を問わず、自分たちのチームは有能だというメンバーの共通の信念 「うちは強いチームだ」
集団効力感 特定の課題を達成するための行動を、チームとして組み立てて実行できるという、メンバーの共通の信念 「この投手の速球なら、つないで1点を取れる」

集団の潜在力は、ガッツォらが「集団が効果的に機能できるという集団としての信念」として整理した概念です。集団効力感は、心理学者バンデューラが提唱した自己効力感(自分はこの課題をやり遂げられるという見通し)を、集団に広げた概念です。

2つの違いは、対象が具体的かどうかにあります。潜在力は「何をやっても強い」という漠然とした自信で、集団効力感は「この場面で、この方法なら、自分たちはできる」という具体的な見通しです。

「介して説明できる」とはどういうことか

論文の結果のうち、最も重要なのは後半です。関係を図にすると、次のようになります。

  1. 集団の潜在力「うちは強い」
  2. 集団効力感「この場面ならできる」
  3. チームの成績勝敗・得点・失点など

これは、「うちは強い」という漠然とした自信が、そのまま成績につながるのではなく、「この場面ならこうできる」という具体的な見通しに変わることで、成績と結びつく、と解釈できる結果です。

実践に引きつけて言い換えると、チームの士気を高める声かけに加えて、その士気を個々のプレーについての具体的な見通しに変える働きかけが必要になる、と考えられます。ただし、これは結果の解釈であり、働きかけの効果を直接確かめた研究ではありません。

野球に置き換えると

ここからは、研究で定義された2種類の自信を、野球の場面に当てはめて考えます。

野球に置き換えると

終盤、1点を追う攻撃 ベンチで「うちは強いから大丈夫」と声をかけるのは、集団の潜在力にはたらきかける言葉です。一方、「先頭が出たら盗塁、次の打者は右方向に転がして三塁へ進める。犠牲フライで1点」と攻め方を共有し、全員が「それならできる」と思えれば、それは集団効力感です。研究の結果にもとづけば、成績とより直接に結びつくのは後者の見通しです。

一二塁間のゴロと一塁ベースカバー 「守備には自信がある」という感覚だけでは、ゴロが一二塁間に転がった瞬間に誰が何をするかは決まりません。「深い当たりは二塁手が追い、一塁には投手が入る」と役割を決めて練習で成功させておけば、チームはこのプレーについて「自分たちはアウトにできる」という具体的な見通しを持てます。

終盤の継投 「うちのブルペンは強い」という評価よりも、「7回は右打者が続くのでこの投手、8回は左打者が並ぶのであの投手」と、場面と役割が対応していることを投手陣全員が理解している状態の方が、集団効力感の定義に当てはまります。

今日からできること

研究が示したのは「関係がある」ということまでで、どうすれば集団効力感が高まるかを直接確かめた研究ではありません。そこで、高め方については、集団効力感の理論的な土台であるバンデューラの自己効力感理論にもとづいて考えます。この理論では、効力感を高める情報源のうち、実際にやり遂げた経験(成功体験)が最も強い影響を持つとされています。

指導者向け

  • 「気持ちで負けるな」ではなく、「この投手にはこう攻める」と、場面ごとの具体的な方法を言葉にして共有する
  • 試合で使う連携プレーは、練習で成功するまでくり返し、成功した事実をチーム全員で確認する
  • 練習試合のあとに、「チームとして狙いどおりにできたプレー」を具体的に3つ挙げて振り返る

選手向け

  • 試合前に、「今日チームとして確実にできること」を1つ決め、仲間と言葉にしておく
  • ミスのあとは「大丈夫、強いから」ではなく、「次はこう守ろう」と具体的な方法で声をかけ合う
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研究からわかること・わからないこと

  • 因果の向きは決められない:メタ分析で示されたのは、自信と成績が一緒に高くなる傾向(相関)です。自信が成績を高めるのか、成績がよいから自信がつくのかは、この結果だけでは区別できません。実際には、両方の向きの影響が重なっていると考えるのが妥当です。
  • 野球に限定した研究ではない:分析の対象は、スポーツチームに限らない、さまざまな集団の研究です。結果が野球のチームに同じ強さで当てはまるとは限りません。
  • 野球ならではの注意点(筆者の見解):野球は、打者と投手の1対1の対決が多い競技です。集団効力感がより大きな意味を持つのは、守備の連携や走者と打者の作戦のように、複数の選手の動きを組み合わせる場面だと考えられます。
  • 話題との関係:阪神の連覇が集団効力感によるものだと主張するものではありません。

まとめ

  • チームの自信には、場面を問わない「集団の潜在力」と、特定の課題についての「集団効力感」の2種類がある
  • 多数の研究をまとめた分析では、どちらもチームの成績と正の関係があると報告されている
  • 「うちは強い」という漠然とした自信は、「この場面ならこうできる」という具体的な見通しに変わることで、成績と結びつくと解釈できる
  • 具体的な見通しは、場面ごとの方法を言葉にし、練習でその方法を成功させる経験を積むことで育てられる、と理論的には考えられる

ピンチで沈まないベンチをつくるのは、気合いの言葉そのものではありません。「この場面ならこうできる」という見通しを、チーム全員が同じ形で持っていることです。

参考文献

  • Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. W. H. Freeman.
  • Guzzo, R. A., Yost, P. R., Campbell, R. J., & Shea, G. P. (1993). Potency in groups: Articulating a construct. British Journal of Social Psychology, 32(1), 87–106. https://doi.org/10.1111/j.2044-8309.1993.tb00987.x
  • Stajkovic, A. D., Lee, D., & Nyberg, A. J. (2009). Collective efficacy, group potency, and group performance: Meta-analyses of their relationships, and test of a mediation model. Journal of Applied Psychology, 94(3), 814–828. https://doi.org/10.1037/a0015659